人と食

人と食のエピソード。笑って泣いてカリフォルニア。

コロナが教えてくれたこと

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2020年春カリフォルニア

 


春をこんなかたちで向かえる事が誰に想像できただろう。

 


多くの人が苦しみ悲しみ涙を流す春。

 


世界は恐ろしく広く

恐ろしく狭い。

 


自宅待機を始めて1ヶ月が経つ。

 


最初の1週間、1日中ニュース記事に目を通し憂鬱な日々を過ごしていた。

 


2週間目に入るとふと気持ちが楽になった。

 

東京の両親とのテレビ電話をした。

 


母は、4年前にウイルス性髄膜炎

倒れた私の事を本当に心配している。

父は…

父に代わるわねーと母。

ケータイの画像が動く動く。

 


父は庭にいた。

庭の草むしりをしていたようだ。

この花が咲いたよ〜と画面に映す。

ぶれてて何の花だかさっぱり分からない。

いちごも見るか?

と苺の鉢の場所に移動しようとすると、母に早く早くと促されて部屋に入る。

いつもと何も変わらない日常が画面の奥にはあって、その日常の色も香りも一瞬にして私を癒した。

 


良い時代になったなーと77歳父は言う。

こうやって話せちゃうんだもんな〜

と孫の顔に目を細める。

 


「昔は良かった」

という言葉を父から聞いた事がない。

 


締めの言葉に「じゃ!元気でがんばれよ!」と言われ、あっさりテレビ電話は終わった。

 


笑ってしまった。

 


世界が恐怖で澱んでいても、

日常は尊く過ぎていく。

 


その事に私は気づかされた。

 

 

 

それから数日後、

おじいちゃんが数年ぶりに夢に出てきた。

 


これは何か今の世の中に対して、格言を言ってくれるのではないかと夢の中で目を見開いて、おじいちゃんが話す度に身を乗り出した。

今か今かと思いながら。

 


夢は支離滅裂。

舞台はデパートの地下のような場所

に移動し、でも屋外。

おじいちゃんはトイレへ行ってくると言って胸ポケットの煙草を手に取って私に言った。

「友達が商売を始めるから

小判型のお餅を買ってくれ。商売繁盛!」

と。

 

私は急いで和菓子屋さんを探して小判型のお餅を買った。

1つしかないのかぁー

ないより良いかなー

と1つ包んでもらった。

 


しばらくして、

トイレからおじいちゃんが戻ってこない。

戻ってこないし、これが夢のエンディングで戻ってこないオチなのがなんとなく分かった。

 

そこで夢は終わり私は目覚めた。

 


起きて笑ってしまった。

 

格言どころかお餅を買わされた。

 

 

日常を楽しめ!

と言われているような気がした。

 

 

 

自宅待機はまだ続く、

尊い日常を楽しむことをコロナから

私は教わった。