地平線の広がる大地で来ないバスをひたすら待ちながら、リュックについたキーホルダーをひたすらカチカチと鳴らしながら私はバスを待った。
風が吹き上がり、
野花の髪を揺らす。
強がって一人で来たはいいけれど、
足元は今にも震えそうだ。
このままバスが来なかったら…
時折こみ上げてくる不安に打ち勝つために更に強くキーホルダーをこすり合わせる。
電話もないし、人もいない。
バスはこないし、ここが正しいバス停なのかも定かではない。
足元の土は白っぽく乾き、
明らかに外国らしい色をしている。
下ばかり見ていると消えてしまいそうだ。
前を見て、ただ風が綿毛を吹き上げる様子を見る。
風は種を飛ばしているのか。
私はただバスを待つ人。
風は私よりも遥かに有能だ。
強い風に色を感じ目で追うとバスが来た。
バスに乗ると涙目だ。
運転手が笑う。
バスに乗るのは初めてかい?
あまりにもこないから心配だった。
僕はまっすぐ走らせていたけどね。
自分の勝手さに気づき呆れる。
何もできないのに偉そうに一人旅か。
バスに入り込む風は強風だ。
ちっぽけな17歳はオーストラリアの風に頬を叩かれた。
バスを降りて友達と再会して、たわいもない話で盛り上がった。
叩かれたことなどすぐに忘れてしまった。
若かったから。
20年経ち
おばさんになって綿毛を見かけるとハッする。
心の中にはきちんと残っている。
そして、
「人より風の方が立派かもしれないよ」と子供に伝える。