人と食

人と食のエピソード。笑って泣いてカリフォルニア。

食いしん坊の話

「きびだんごって何味?」

桃太郎を読んでもらった幼い私は、おばあちゃんに何度もそう聞いたらしい。

「和ちゃんがね小さい時、何度もきびだんごの味をおばあちゃんに聞いたのよ。」そう話すおばあちゃんの顔が嬉しそうだった。

私はおばあちゃんの想像通りの食いしん坊なおばさんに成長した。

今日は日常の小さな食いしん坊エピソードを3つ。

 

〈香る紅茶〉

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器:Shelley 

おばあちゃんは毎朝紅茶を飲んでいた。

時々、紅茶にコアントローというオレンジリキュールを少し加えて飲んでいた。

私も時々、こうして同じように飲む。

そうすると、あの時のリビングの香りや色や絨毯の柄まで鮮明に思い出される。

「どう?美味しいでしょ?」

おばあちゃんの声が聞こえてきそうだ。

 

〈いちごの切り方〉

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器:HEATH ceramics

面白いなと思うのは、日本のケーキやお菓子で添えられている苺はそのまま1個か、縦にスライスが多い。縦半分、縦4等分やスライスも縦にこだわる。

いちごを輪切りにするだけで、外国らしく変身する。切り方一つで表情が変わる。シロップをしっかりキャッチするので味も食感も変わる。

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縦切りいちご

器:Arabia/Anemone

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輪切りいちご

器:GUSTAFSBERG/Prunus

そして何よりも、うすーい輪切りにすると、縦切りよりもたくさんに見えるのが食いしん坊には大きなポイントだ!

 

〈お稲荷さん〉

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器:HEATH ceramics

油揚げを炊いてお稲荷さんを作る。

お出汁を引く、煮る、ご飯を炊く、酢飯を作る、握る、包む。その工程はシンプルでありながらも家庭料理の醍醐味が総結したお稲荷さん。

お稲荷さんを作ることも食べることも私にとって癒しでしかない。

コロナ以前、多い時は月に百個以上作っていた。桃太郎の様に腰につけてはいないが、カゴバックに忍ばせて会う人に配っていた。カリフォルニアの青空の下で家族や友達と食べるお稲荷さんは格別で、マスクも手袋もしないでお喋りをしながらお稲荷さんを摘んでいた。

また、そういう事が出来る日が来る事を切に願っている。

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器:HEATH ceramics

その日までは、余ったお揚げをお蕎麦やおうどんに乗せて楽しもう。

一度に出来るお稲荷さんは30個。

今まで余ることなどなかったから、きつね蕎麦を食べながら複雑な気持ちが込み上げてくる。

食いしん坊は前向きだ。

でも、たまにはお揚げを噛み締め泣かせて欲しい。