人と食

人と食のエピソード。笑って泣いてカリフォルニア。

美味しいお浸しを召し上がれ!〜しょうゆ洗い〜

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菜の花の季節が終わり、

お浸しがほうれん草に戻る頃、

新しい学期、新しい年度が始まる。

 

大将(夫)と結婚して12年が経つ。 

新婚当初は、煮込みハンバーグにフライドポテトと人参のグラッセの付け合わせが好きだと言っていたけれど、最近は「お浸し」をやたらと褒める。菜の花のお浸しに関しては、1鉢で3度旨いと吠えていた。一回り一緒に過ごして、煮込みハンバーグのポジションがお浸しに譲られたのかと思う。

 

そんなお浸しは、私が家庭料理にのめり込むきっかけをつくってくれた。

下ごしらえのしょうゆ洗い

しょうゆ洗いという言葉を聞いたのは学生の頃で、あの頃は資格試験に安らぎと希望を感じていた。そう、失恋するたびに資格に走り、また恋をすると資格の本などポポイと片付けたそんな頃。

家庭料理技能検定試験というものを受けたことがある。当日、実践調理で丁度予習していた「ほうれん草のお浸し」に運よく当たり得をした試験だった。

ほうれん草はたっぷりのお湯で湯掻いて、冷水で締めて、巻きすで絞り、小さじ1弱ぐらいのお醤油を全体に振り馴染ませて、そしてまた絞る。これをしょうゆ洗いという。

この下ごしらえの「しょうゆ洗い」これは、ほうれん草に限らず、季節のお浸しを一歩踏み込んだ美味しさにしてくれる。

お醤油が持つ塩分で、葉の水分を程よく脱水しながら〜ほのかな下味までつけることができる。

たった一手間、その一手間を加えるだけで、季節のお浸しのそれぞれの葉を隅々まで美味しく楽しむことができる。

わたしはこの料理の一手間に大きな可能性を感じてしまった。お浸しに自分の明るい未来まで便乗させてしまうほど見込みをつけた。

日本の家庭料理には、工夫を凝らし、食材のおいしさを引き出す方法を見つけ出した先人方の知恵が溢れている。食材への敬意も感じられる。こんな家庭料理はきっと他にはない!

見えます見えますワタシの明るい未来!

もちろん、それだけがきっかけではないけれど、結果としてざっくり言えば、それから家庭料理を教える料理講師になり、主婦になり今になる。

もっと大袈裟に言えば、しょうゆ洗いをするお浸しに出会わなければ今はない。

ここまで言えば、みんながしょうゆ洗いをはじめてしまうだろうと計算高く見込んでいる。

美味しいお浸しが普及できるのならばそれでいい。そうしておく。

 

〜しょうゆ洗いをし、食べやすい長さに切って鉢に盛り、おかかをのせて、出汁醤油をかけて〜さぁ召し上がれ!

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