人と食

人と食のエピソード。笑って泣いてカリフォルニア。

観戦のすゝめ

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夏休みの私の左手。息子の新しいグローブをしなやかにする為に、彼がサマーキャンプ中私はこうしてグローブに手をはめるという宿題を出された。真夏のグローブ。息子たちはいつもこんなに暑いものをはめて走り回っているのかと感心してしまった。手が一つ入っているだけなのに身体が暑い暑い。


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どうやら私の夏休みの課題は身を結んだ様だ!

ドジャース対アスレチックス戦を観戦しに行ったら、ピッチングのウォームアップで使用したボールをアスレチックスの選手がこちらに投げてくれた。そのボールを待つ子供達の群れからずいぶんと離れた階段で「こっちに投げて!」と手を挙げ猛烈アピールの次男。まーこんなに遠くまで投げてくれないだろうな〜と思った瞬間、スパッ!っと次男がキャッチ!ワッと周りも盛り上がった。こちらを振り返った時の次男の顔はまさに一生の宝物。興奮と驚きで漫画よりも漫画の顔をしていた。「投げるよ!って目で合図されたんだ!!」と飛び上がって喜んでいた。夏休みに私が暑い暑いと言いながら手を入れていたあのグローブは"メジャーリーガーのボールをキャッチしたグローブ"という付加価値が付き、息子の野球に対する情熱までも上げてくれた。息子がこんなに遠くだから無理だ〜と思わず、きっと投げてくれると信じてしっかりアピールしてチャンスを掴んだことに、お母さんはまた一つ学ばされましたよ。同じやるなら全力で!見習います。


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今シーズンでここカリフォルニア州オークランドでのアスレチックスの試合はおしまい。移転先はネバダ州ラスベガスで2028年を予定しているとか。それまでは、オークランドから1時間ちょっとの首都サクラメントの球場でホームゲームを行うという。

アスレチックスのヘルメットナチョスを食べながらこの20年を思い返しグッとくるものがあった。2004年イチローの年間最多安打記録262本が出るか出ないかの時も私はこの球場にいた。サンフランシスコの学生で大事なテストの勉強をしなくてはいけない日だったが、勉強ではなくイチローを選んだ。今思えばイチローを観に行って大正解だった。あの記録の凄さ、周りの盛り上がり、大記録を前にしたイチローの平常心な振る舞いを息子たちに語ることが出来るのは球場に足を運んでいたからこそ。記録は次戦のシアトルのホーム球場で達成されたが、あの歴史的な瞬間をアメリカで過ごせて、同じ日本人として誇らしく思った。その後の自分のテストがどうだったかはすっかり忘れてしまったが、試合のことは鮮明に覚えている。きっとお婆さんになってもあの日のイチローの姿を私は嬉しそうに周りに話すと思う。そんなことを振り返りオークランドの球場にさよならをしてきた。

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スポーツには限られた時間がある。常に進み続ける魅力がある。

どんなスター選手であっても50年プレー出来る人は少ない。輝けるのは長くて数十年で、次の世代に交代する。お兄さんお姉さんが球場やアルプスで輝いていた甲子園も、いつの間にか年下の子達の大会になっていて、今では選手の保護者の方が年が近い。もちろん、この時間の流れには誰も逆らえないし、逆らえないところがとてもいい。さっぱりしていて気持ちが良い。スポーツを軸にした時間の流れに愛しさすら覚える。自分たち世代のスターの栄光を語りながら次のスターを見守る。これを楽しみに出来れば、前向きに日々を過ごす秘訣になるだろう。毎日が平坦で、何も楽しみが見出せないならば、スポーツ観戦を日常に加えてみることを私は強く勧めたい。