人と食

人と食のエピソード。笑って泣いてカリフォルニア。

アメリカの町中華

あれは20代前半の話で、カリフォルニアからコロラドまで列車で行き、そこから車で旅をしながらカリフォルニアまで戻って来た時のことである。スマホもない、かろうじて気休め程度に電波を拾う携帯時代の旅。道中、ひたすらガソリンを入れるその旅の食事は、ひたすらサブウェイのサンドイッチだった。食べたサンドイッチの数だけアメリカの広大さを痛感した。そして、サンフランシスコの恵まれた食環境で留学生活を送っていた私には衝撃の「米なし旅」となった。

忘れもしないあの日、ネブラスカとコロラドの州境の小さな町で私は実在する竜宮城に導かれるように出会った。赤い屋根と鉄格子のついた建物のエントランスには「福」と書かれた赤い紙が見えた。中に入ると凄い勢いで配られるメニューと頼んでもいないポットのお茶がやってきた。注がれると溢れてテーブルがびちゃびちゃになる小さな湯呑みに涙が出そうなほど嬉しかった。そして、同じく米を食べて育ったであろう中国人の店員さんの素っ気ない対応に懐かしさと親しみを抱いた。

あの日に食べた、ブロッコリービーフや真っ赤な甘酸っぱいソースのかかったご飯のランチメニュー。全細胞に行き渡る米の旨み。あの竜宮城でのひとときを私の身体は一生忘れないだろう。

いや、あの旅だけじゃない、あれからずっとこの国で「町中華」の存在に何度も救われている。あの安心感はなんなんだろうか。どこの町でも僻地と呼ばれる場所であっても、きちんとアメリカ人の味覚に合わせた中華料理が振舞われている。本場の中国では見かけたことのない完全にアメリカナイズされた中華料理に、果たして母国の料理にプライドはないのか?と中国人の友達に聞いたこともある。彼女は「そもそもお米に合う料理がアメリカにないじゃない!」と笑い返してきた。

目から鱗。その通りだわ!とすんなり納得させられた。

プライドとかなんとか小さなことを言う前に「米を食べる=食事」だという大前提が私たち日本人にもある。

私もアメリカでカリフォルニアロールを食べて、これは日本人としてありえない食べ物だ、けしからん!なんて思ったことは一度もないし、むしろ、ご飯とアボカドを出会わせたのは誰よ〜最高〜♡と思い食べている。 

町中華が好きだ。

その土地に愛され発展していく母国の料理を受け入れ楽しむ、この大らかさに救われているのかもしれない。

 

おしゃれなナパにもあるよ町中華!@Wah Sing

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最強のビジュアルを空撮。


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サンラータンスープはむせるほど胡椒がきき、

五目焼きそばは毎回味が違う。


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何の海鮮だしなのか分からないさっぱりしたヌードルスープとほっぺたの横がミシッとなるほど甘酸っぱい赤いタレを付けて食べる春巻き。

 

おまけ
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アメリカ町中華の進化系、中華料理のファストフードの「パンダエクスプレス」のお持ち帰りディナー🥡

このパンダエクスプレスが、アメリカの中華料理の定番オレンジチキンの全米大流行の火付け役と言われている。

社会貢献度の高いパンエキは、学校や地域の団体で指定された日に配られたコードを使って購入すると、売上の20%ぐらい(団体による)がその団体に寄付されるという素晴らしいシステムを持つ。なので、我が家も年に数回、この寄付制度に便乗してパンエキディナーを楽しむ。

オレンジチキンのアレンジ


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