和子12歳
「なぁ、あれ食べたいな、あるか?」
おじいちゃんが私に尋ねる。
「ないから買ってくるね!」
「セブンイレブンいい気分の抹茶がいいな。」
「了解!」
自転車を走らせコンビニへ向かう。
立ち漕ぎで。
お小遣いでは買えない値の張る抹茶アイスが私も食べられるこのチャンス!
おじいちゃんも私がこのアイスが大好きなのを知っている。
「買ってきたよー!」
おじいちゃんが自力で起き上がれる調子の良いこの日。
私の心もはずむはずむ。
でも、おじいちゃんはベッドの上から天井を仰ぎ起き上がらない。
「おじいちゃん、アイスどーする?」
「あぁ、食べさせて〜♪」
おどけて口を開くおじいちゃん。
アイスを2人の口に交互にスプーンで運ぶ。
恋人同士のように。
「ん〜♪」
「ん〜んまいっ♪」
お茶目なおじいちゃん、
おかしくて、恥ずかしくて、歯がゆくて、悔しくて涙がこぼれ落ちる。
おじいちゃんに食べさせてあげたこと初めて…
スプーンから溢れんばかりの愛しさがおじいちゃんの口へ向かう。
私が小さい時にこうして食べさせてくれたのかな。
こうして愛しい眼差しを添えて、
おじいちゃんは何度私に微笑んでくれたのだろう。
スプーンを前に出す度に、その腕に目を擦りつけて泣いていることを必死で隠す。
「幸せだなぁ〜」
こんな時にまたステキな言葉を言わないでよ、おじいちゃん。
もう涙が隠せなくなってしまうでしょ。
自分の番ををいくつも飛ばしたスプーンを夢中になっておじいちゃんの口へ運ぶ。