人と食

人と食のエピソード。笑って泣いてカリフォルニア。

世界の広さとぶどうの記憶

4年前の今日の話。

いつものように、主人が帰ってくると育児の愚痴をこぼしていた。

脈絡のない話をだらだらと。

すると、突然主人が、

『エチオピア人の同僚が言ってたんだけど、今日はエチオピアの新年らしい。しかも2009年なんだって。1日が24時間じゃないらしくて慣れるまで大変だったらしいよ』と言い出した。

もう、世界の異文化出してくるなんてずるい!その同僚が距離に関わらず世界のどこへ行っても時差ぼけに悩まされることを思ったら、育児の愚痴なんてちっぽけすぎてどこかへ飛んでいってしまった。

世界って広い。

その広さにいつも救われる。

***

 

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先日ファームで見つけたぶどう。

種あり苦味ありでとても美味しい。懐かしい味。

「ベリーエー」

食べながら、父が言っていた言葉をふと思い出した。

調べてみるとマスカット・ベリーAという言葉が出てきた。私は植物に詳しくないが、両親の会話の中から繰り返し聞いていた言葉がポロっと口に出ることがある。面白いなと思う。

 

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先日父から送られてきたぶどうの写真。

ぶどうが置かれた昭和なベンチも剪定バサミもお爺ちゃんの愛用品で今は父が使っている。

この写真を開いた途端、お爺ちゃんの煙草ハイライトの香りまで一緒に届いた。

人の記憶とは本当に上手くできている。普段は思い出しもしないのに、何かきっかけになるものを見たり聞いたりしただけで、味や香りや空気の暖かさまで蘇る。

 

東京郊外の小さな庭で作る父のぶどう。

もう30年以上育てている。

母はぶどうのツルでリースを作っていた。

子供の頃は、皮が厚くて種がいっぱいでなんだか忙しくて好まなかったこのぶどう。

まさか、ファームへ行って似たようなぶどうを自ら選ぶとは。

 

いつも種なしぶどうを食べている子供達が、

「このぶどう難しいけど美味しいね。」と言いながら口を尖らせ食べている。

私の中に新しいぶどうの記憶が加わった。