人と食

人と食のエピソード。笑って泣いてカリフォルニア。

毎日の食卓

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自宅待機中チーズプレート 

器:KOSTA BODA

 

 

気に入った器をどんどん使え!

使って壊れたら本望だの精神は

おじいちゃんから学んだ。

 


実家は来客が多かった。

祖父母は料理上手のお嫁さんの手料理を嬉しそうに振る舞った。

 

ゼリーカップの下にレースの紙が敷かれ、受け皿、スプーンが添えられる。

おにぎりの下には庭のバラン。

煮物は大皿にどどんと盛りお客様に正面を向けて。

私は何気ない母のコーディネートに心を躍らせた。

毎日こんなだったらいいのに!と。

 

 


私が12歳の時、

おじいちゃんの自宅介護をした。

おじいちゃんのベッドはリビングに配置された。

3歩で食卓に着く事ができるように。

 


母はおじいちゃんのリクエストを

毎日聞いていた。

 

時々、突拍子もないものをリクエストして、お夕飯の時に

「なんでこれが食べたいと思ったんだろうな〜?」

と首を傾げるお爺ちゃんにみんなで笑った。

 

 

おじいちゃんは本当によく食べていた。

おじいちゃんの病気がマッキと呼ばれる厄介なものであっても。

 

 

食卓には笑顔が溢れてこれが永遠に続くことを誰もが願っていた。

 

 

だんだんとおじいちゃんの食欲が落ちてゆき、食器がお客様用ばかりになった。

流動食を普通のお皿に盛るのは味気ない。

メロンを盛る厚手のガラスのお皿に流動食が注がれ、小皿が添えられている。

母の配慮が美しく、そして苦しかった。

 


これが最後の食卓かもしれない。

今日のこれが最後の食事かもしれない。

 


食事が終わると自分のお皿を下げて、

納戸で何度も泣いた。

 

 

 

 

 

日常は尊い。


毎日の食卓を楽しくしたい。